仏が衆生を救うために'権(かり)'の姿で'現れ'たものを権現と呼びます。神仏習合が進んだ日本に特有の存在です。
蔵王権現は修験道の本尊で、釈迦如来(過去)・千手観音(現世)・弥勒菩薩(未来)の三仏の徳を兼ね備えます。修験道の祖とされる役行者が吉野の金峯山に籠って修行をしていたときに感得したと伝えられます。右足を上げた特徴的なポーズは、感得の際に磐石(ばんじゃく)から飛び出してきたという説話によるものです。
モデルは三佛寺(鳥取県)蔵の重文「木造蔵王権現立像」。切り立った崖のくぼみに建つために"日本一危険な国宝"とも称される同寺の「投入堂(なげいれどう)」の正本尊です。胎内納入品にある「かうけい」の文字が運慶の父・康慶のことを指すのではないかとも言われています。
全体的に軽やかで動きのある造形を丁寧に作成。永い月日にわたる護摩焚きの影響と思われる煤の具合までしっかりと再現しています。
監修者には数々の仏像に関する著作でも著名なみうらじゅん氏を迎え、造形・彩色ともに氏の監修を繰り返しながら完成させました。