動きのある構えや張りつめた均衡、静止の中にたまった力を手がかりに、明王像を選んでいます。明王像は、穏やかさや完成を示すものではありません。身を捻った姿勢や引き締まった構え、切り詰められた構成によって、力が放たれる直前の気配を、そのまま造形にとどめています。
時代や素材が違っても、制作者たちが向き合ってきた問いは似ています。荒れずに、強さをどう形にするか。崩さずに、動きをどう留めるか。明王像に見られるのは、ひとつの動作ではなく、抑え込まれた動きです。力は外に出ることなく、形の内に集められています。
一体一体の像は、強い存在感を持ちながらも、見せつけるようには立っていません。その引き締まった佇まいの中に、力と規律、そして判断の確かさが結びつき、密教美術における明王像の位置を静かに示しています。