如意輪観音は人々の救済のために変化する六観音の一尊。手にした如意宝珠で思うままに願いを叶え、法輪で煩悩を打ちくだき仏教の教えを広め、六道の衆生を苦しみから解放し、智慧と福を与える仏です。
多くは一面六臂の姿で表され、右膝を立て左右の足の裏を合わせて座る輪王座は如意輪観音に独特のものです。揺るぎない救いの力を示すため、左の一番上の手で台座を押さえています。
モデルは大阪府の国宝 木造如意輪観音坐像。嵯峨上皇妃 橘嘉智子(檀林皇后)の発願による造像とされ、生来病弱であった実子 仁明天皇の回復を願ったものとも考えられています。
長く秘仏とされてきたため全身に造像当時の彩色が残り(光背は後補)、肉感的な肢体に切れ長の目が官能的な美を強く感じさせます。一面六臂の異形ながら見事な調和を見せる神秘の造形は、密教美術の傑作のひとつとして高く評価されています。
イスムは、この奇跡の造形美を損なうことなく再現。裙から蓮弁に残る鮮やかな色味を、ひとつひとつ丁寧な彩色で表現し、宝冠や法輪、臂釧、宝珠の金色の箇所には金箔を贅沢に使用しました。さらに随所に落ち着いた輝きを加えることで、像の存在感をより一層引き立てます。