戦いを勝利に導く武神として、多くの武将たちに信仰された毘沙門天。特に上杉謙信の毘沙門信仰は有名です。武神のイメージが強いのですが、もとはインド神話に登場する財宝の神・クベーラが仏教に取り入れられたもので、富を授ける福徳神としての信仰も根強く、七福神の一尊に数えられます。四天王の一尊としては「多聞天」と呼ばれ、北方を守護しており、今でも東北地方に多く作例が残されています。
モデルは2013年に国宝指定された「毘沙門天立像」。平安から鎌倉へと時代が変わろうとしている文治2(1186)年に、名仏師 運慶の手によって造像されたものです。躍動感あふれる姿は東国武士のたくましさを思わせ、運慶の新時代への意欲と確かな力量がうかがえる名作です。
イスムでは実物の持つ質感と量感を徹底検証して造り上げました。玉眼の輝きは6回に分けて彩色を施し、その力強い眼力を再現、黒光りする胴体と爛々と輝く眼の強い対比が強い印象を与えます。丁寧な研磨と彩色によって再現する、年月を経た漆の持つ美しい古色にこだわっています。