静けさを纏う剣——武蔵の魂が宿る木彫仏
彼が彫ったのは、ただの仏像ではなかった。
それは——自らの魂そのものだった。
両手で大振りの剣を握る異形の不動明王。
この像は、宮本武蔵が自ら手彫りした唯一の仏像と伝えられています。一般的な不動明王像とは異なり、その構えはまさに武蔵自身の剣術姿を彷彿とさせます。『宮本武蔵遺墨集』では、「普通の仏師が夢にも思い描けない造形」と称されるほど、異彩を放つ存在です。
この像はかつて、武蔵が『五輪書』を執筆したことで知られる霊巖洞を抱く雲巖禅寺に代々受け継がれていました。65年前にその地を離れてからは長く行方が絶たれていましたが、2025年、現所有者のご厚意により、等身大の複製像が雲巖禅寺へ奉納されました。
その折、開眼供養のご祈祷が馬場御住職により執り行われ、
この仏像はふたたび、木を超えた存在へと目覚めたのです。
この神聖な瞬間は、今お届けする複製像一体一体にも込められています。
本像は、高精度3Dスキャニングで原像を忠実に再現し、MORITA独自の「木彫りハイブリッド製法」により削り出されたもの。数値精度と伝統技法を融合し、さらに熟練職人による表面の研磨・細部の鑿入れ・手彩色を経て仕上げられます。
特筆すべきは、欠損した右手の指や左足のつま先をあえて復元していないこと。
それは単なる「傷」ではなく、「時を生きた証」だからです。
修復することは、時間が刻んだ真実を塗り替えること——
武蔵ならば、それを望まなかったでしょう。
最終彩色は、木彫彩色の正統後継者である彩色師・篁千礼が一体一体に施し、以下の証明が付属します:
島田美術館認定書(原像所蔵)
雲巖禅寺 開眼供養証明書
篁千礼 彩色証明書
桐箱収納
高さ約45cmの像が放つ存在感は、空間そのものを変えます。
そこに宿るのは、恐れではなく——揺るがぬ静けさ。
怒りではなく——澄みきった明晰さ。
これは飾りではありません。
守り神であり、遺された記憶であり、木に宿った魂です。
ただの伝説ではなく、ひとりの生きた武蔵その人を愛する方へ。
この像は、まさに——一生に一度の捧げものです。