古代インドで福徳を司るとして信仰を集めた女神が、仏教に取り入れられ吉祥天となりました。一般的には唐時代の貴婦人の姿をし、願いを叶える如意宝珠を掲げる姿で表されますが、当像は木喰仏らしい大胆なデフォルメが施されています。
モデルは静岡県浜松市にある臨済宗方広寺派大本山方広寺が所蔵する木喰像。方広寺は臨済宗方広寺派の大本山で、後醍醐天皇の皇子、無文元選禅師(むもんげんせんぜんじ)によって開山されました。皇室に縁ある寺院として、廃仏毀釈の際にも被害が少なく、今も多くの文化財を所蔵しています。 無文禅師は中国からの帰路、海上で嵐に遭いますが、これを助けたのが半僧坊という神様。方広寺開山の際に再びその姿を現し、無文禅師没後、そのまま方広寺のある奥山の鎮守として祀られ、以降、当地の人びとから篤い信仰を集めます。