二刀を用いる二天一流兵法の開祖である剣術家 宮本武蔵は、稀代の剣豪としてあまりにも有名で、戦国武将と並び根強い人気を誇る歴史上の人物です。その晩年は意外にも茶・禅・書画三昧の生活で、自ら描いた『鵜図』『枯木鳴鵙図』『紅梅鳩図』は国の重要文化財に指定されるなど芸術面でも非凡な才能を発揮しました。そんな武蔵が彫り上げた木彫像に『不動明王立像』があります。
その像容は一般的な不動明王のそれとは異なり、倶利伽羅剣を両の手でしかと握った、まるで剣術における“八相の構え”を彷彿とさせます。何より、見る者を圧倒する明王の鋭い眼光は、64年にわたる武蔵の激烈な人生そのものと言っても過言ではなく、この大剣豪武蔵の威容と生き様が宿ったかのような明王像を再現したのが『宮本武蔵 不動明王立像』です。彫刻は中国彫刻界の英才 葉志遠に依頼し、彩色は仏像彩色の第一人者 篁千礼が監修。(古式を帯びた彩色に至るまで再現しました。)
かの有名な吉岡一門70人(諸説あり)との闘い、そして佐々木小次郎との巌流島の決闘など、生涯60数回の闘いすべてに勝利したとされる天下無双の剣豪 宮本武蔵。晩年の5年間は、熊本 金峰山にある霊巌洞(れいがんどう)にこもり、自身の兵法や剣術の極意を論理的にまとめた兵法書『五輪書』を執筆しました。
この書の内容が本来の目的を超越し、現代におけるビジネス戦略や精神修養に有効な“人生の指南書”として高く評価され、1970年代にはアメリカで『The Book of Five Rings』として出版されベストセラーとなったほか、数か国語に翻訳され、世界有数のビジネススクール・HBS(ハーバード大学経営大学院)で経営学のテキストに採用されるなど、世界中で広く読み継がれています。
剣の求道者だけに留まらず哲学者としても高い評価を受ける武蔵の人物像は、『宮本武蔵(吉川英治作)』をはじめ数々の小説、映画、演劇はもちろん、近年は『バガボンド(井上雄彦作)』や『刃牙道(板垣恵介作)』などの漫画でも伝えられ、根強い人気を誇ります。その武蔵が彫ったとされる不動明王像を忠実に再現した『宮本武蔵 不動明王立像』は、剣豪武蔵の魂に触れ、人生のあらゆる困難に立ち向かうことのできる“覇気”を授かる念持仏として、皆様の身近にお祀りいただきたいお薦めの逸品です。